ジャパン・ハウス ロサンゼルス『Windowology: New Architectural Views from Japan』
ジャパン・ハウス ロサンゼルス
『Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である』オンライン展示開催
パンデミックによる閉鎖後初となるジャパン・ハウス ロサンゼルスでの展覧会 オンラインによるバーチャルエキシビジョンをスタート
一般財団法人 窓研究所が企画し、世界3都市を巡回する展覧会『Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である』は、2020年10月24日(土)PSTより、ハリウッドの中心に拠点を構え、日本文化の発信を行うジャパン・ハウス ロサンゼルスにて、オンラインによるバーチャルツアーを開始しました。バーチャルエキシビジョンでは、本展の展示ディレクター 五十嵐太郎氏とジャパン・ハウス ロサンゼルス館長 海部優子氏によるメッセージ、五十嵐太郎氏によるエクスクルーシブな展示解説などもお楽しみいただけます。
一般財団法人 窓研究所による「窓学」(Windowology)は、建築文化の発展を目的に、建築史家・建築批評家である五十嵐太郎氏監修のもと企画する学際的な研究プロジェクトで、ユニークな視点で窓の新たな可能性について探求しています。窓を建築の一部としてだけではなく、人間の生活やふるまいに密接に関係しているものと捉え、様々な分野から“窓”を読み解くアプローチをしてきました。本展は、この日本発祥の「窓学」を紹介する絶好の機会になります。
「窓は建築において最も重要な要素の一つです。必要に応じて開閉し、外の世界と内の世界をつなぐ機能を持っています。窓は透明なガラスでできているので、外の世界と中の世界を見ることができますが、ガラス自体が物理的な盾のような役割を果たし、風雨や害から私たちを守ってくれます。」と、五十嵐太郎氏は語ります。
本展は、五十嵐太郎氏のディレクションのもと、建築模型、ドローイング、写真、映像、漫画、工芸品、環境統計、また、アーティスト 津田道子氏の新作などを展示します。また、本展は、日本の窓にも焦点を当てています。日本の伝統的な建築は、柱と梁の間にある建具を取り除いたり、窓や網戸を開閉することで、室内外の空気を変化させることができます。一方、日本の茶室は、閉ざされた箱の中に様々な開口部を設けたものであり、日本の建築史の中でも特別な位置を占めています。本展では、現存する茶室としては最大の窓数をもつ茶室「擁翠亭」の原寸大模型も再現展示されます。
本展は、「窓学」の10周年を記念し、2017年、東京都港区のスパイラルで開催された「窓学展ー窓から見える世界ー」をベースに、過去から現代まで日本の建築に存在してきた窓の魅力を伝えることを目的に、海外での展覧会に向け再構成されたものです。
本展展示ディレクター、ジャパン・ ハウス ロサンゼルス館長からのメッセージ
コロナ禍における窓の可能性
2020年、世界中を覆いつくしたパンデミックは、わたしたちの日常を根本から変えました。人が集まる空間は良いとされた建築の前提も、ひっくり返り、あらゆる人間があらゆる人間に対する潜在的な脅威となるような状況に陥りました。この展覧会も、会期や会場のデザインの見直しが余儀なくされました。当然、窓という建築の重要な部位にも、新たな考察が要請されます。人々が外出を減らし、家にひきこもる社会において、やはり窓こそは外部と内部をつなぐ装置だからです。また窓は、外に対して開くことと、閉じることという相反する2つの機能をもち、この矛盾は経済活動を再開するか、安全を優先してロックダウンを続けるか、という社会が抱える根本的な問題とも重なります。そして窓のガラスは、透明ゆえに、向こう側が見えるけれども、物理的なシールドとしても機能します。
巨大津波が多くの街を破壊した2011年の東日本大震災の後、窓学では、窓をめぐる討議を行ったことがあります。またアートの分野では、「とある窓」展において、室内から窓の外にむけて被災地を撮影した写真の数々が、風景の変化を語る居住者の言葉とともに展示されました。それらの窓は、まさに3.11の前後、そして復興の過程を目撃したものです。
さて、コロナ禍によって活動を制限されたわたしたちは、家に滞在する時間が長くなりました。家にいながら遠くの世界につながるパソコンという新しい時代の「窓」に向きあうことも増えましたが、一方で従来の窓がまわりの風景や近所の人たちをリアルに結ぶ役割を果たしていたことを改めて強く感じたはずです。
実際、窓辺のバルコニーから隣人に向けてオペラを歌ったり、窓越しに医療従事者への感謝のメッセージを発信したり、ソーシャル・ディスタンスを維持すべく窓を介してモノを受け渡しするなど、危機的な状況において窓ならではの力を発揮しました。これまでにも世界の地域や文化圏によって、窓は人々に異なるふるまいを誘発しましたが、コロナ禍でもそうした多様性は認められました。本展が、来場されたみなさまに、改めて窓がもつ可能性について想像していただくきっかけになれば、幸いです。
展示ディレクター 五十嵐太郎
今年2回目となる大規模な展覧会を開催できることを非常に喜ばしく思っています。私たちは、世界の他の国々同様、窓が私たちと隣人をつなぐ役割を果たしていることを目の当たりにしてきました。窓は、外の世界だけでなく、中の世界も見ることができるのです。本展で、日本文化における窓のユニークな役割を見ることができます。この展覧会が、人々の生活に必要不可欠な窓について、改めて深く考えるきっかけとなることを願っています。
ジャパン・ ハウス ロサンゼルス館長
海部優子
本展の構成について
10のテーマで構成されています。
「アートの窓」(Windows on Art)
「手仕事の窓」(Windows on Craft)
「環境の窓」(Windows on the Environment)
「ものがたりの窓」(Windows on Stories)
「掬月亭の窓」(Windows on Film)
「漫画の窓」(Windows on Manga)
「茶室の窓」(Windows on the Teahouse)
「現代住宅の窓」(Windows on How We Live Now)
「窓の動き」(Windows on Motion)
「窓の格言」(Windows on Words)
本展について
本展は、ジャパン・ハウスが拠点を構える世界3都市を巡回する展示企画の第3期として選出されたものです。ジャパン・ハウスは日本の多様な魅力や政策・取組を発信することにより、日本への理解と共感の裾野を広げることを目的とした新たな拠点として、外務省により世界の3都市(サンパウロ・ロサンゼルス・ロンドン)に設置されました。日本に関する様々な情報がまとめて入手できるワンストップ・サービスを提供するとともに、レストラン、ショップ等を設置し、民間の活力、地域の魅力なども積極的に活用したオールジャパンでの発信の実現をめざします。さらに、専門家の知見を活用しつつ、現地のニーズにきめ細かく対応して現地の人々の共感を呼ぶよう工夫を行います。
公式ホームページ:https://www.japanhousela.com