Exhibition Journal

ヴィラム・ウィンドウ・コレクションでの展覧会

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窓研究所とヴィラム・ウィンドウ・コレクションの出会い

2008年、ヴィラム・ウィンドウ・コレクション(VILLUM Window Collection/VWCO)に珍しい来客がありました。それが、窓学(Windowology)のプロジェクトに携わる東京の建築学生たちでした。研究の一環として、レム・コールハースがディレクションを務めた「Wall of Windows(壁一面の窓)」の展示を見に、コペンハーゲンにあるVWCOまでやってきたのです。
学生たちが東京に戻り、窓に特化した当館について窓研究所に伝えると、ジャパン・ハウスで「窓学」の展覧会を企画するべくロンドンに向かう予定だった窓研究所の代表者たちは、当館を訪問することになりました。窓研究所の方々や所長が、当館を訪れるためだけにコペンハーゲンへ立ち寄っていただいたのは、とても光栄なことです。
その来訪時に、私は窓学展のことを初めて耳にし、ロサンゼルス、サンパウロ、ロンドンの3都市にあるジャパン・ハウスで展覧会を開く予定であることを知りました。そして私は来訪中の彼らに、ロンドンの後にVWCOでも窓学展を開くことは可能かと相談を持ちかけたのでした。当然、窓研究所にとっては考えもしていない選択肢だったでしょうが、そうした提案にもオープンで、いい機会だと捉えてくれたことがわかりました。

窓学展

展覧会の開催時期については新型コロナウイルス感染症の影響により、何度か変更になりました。さらにロサンゼルスでは、無観客のオンライン展示となりました。2021年の12月にはロンドンでの展覧会のオープニングが開かれましたが、新型コロナウイルス関連の行動制限は続いており、総合監修を務めた五十嵐太郎氏はロンドンへの渡航が認められずZoomでの参加を余儀なくされました。
私は2021年11月に先行してロンドンでの「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」展を見学しました。初めて実際に目にして、そのエレガントでシンプルな展示に心を打たれました。比較的小さな展示のなかにあっても、窓にまつわる物語が実に多様に伝えられていたのです。この展覧会が私の心をとらえたのは、窓が建築物の単なる構成要素ではないことを示しているからです。そしてこの点こそ、コペンハーゲンのVWCOでも展示をお願いした理由でした。私たちの文明や世界各地の文化における窓の重要性に関して、ゲストの方々が新たな気づきを得られるものになることでしょう。

コペンハーゲンでの開催に向けて

最初の時点から、理事会や当館を所有するVKRホールディングは、この展覧会をVWCOで開催することを全面的に支持してくれていました。そのため、私がロンドンでの展覧会を視察し、展示の規模も当館によく合うものであることを確認してから、コペンハーゲンでの開催実現に向けて本格的に動きだしました。
ロンドンでの開催期間中、私はコペンハーゲンでの開催について窓研究所と打ち合わせを重ね、かなりスムーズに段取りが決まりました。しかし展覧会開催の再手続きにいくつか問題があり、作品をコペンハーゲンへ送る前に一度東京に戻さなければならない可能性がありました。とてもコストのかかるプロセスです。この問題についても、すぐに窓研究所が解決に尽力してくれたため、私たちは作品をロンドンから直接受け取ることができました。
検討を重ねた結果、駐デンマーク日本大使の予定なども考慮し、「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」展は2022年9月15日から開催することに決めました。
2022年6月2日には巨大な木箱8個分の展示作品を受け取りましたが、9月上旬に荷解きをするまでのあいだ保管しておく場所を探すのには少し苦労しました。

VWCOでの展示設営

VWCOでの「窓学」展の準備は、初めのうち目まぐるしいものでした。まったく新しい展示スペースを作ることから始める必要があったからです。物置スペースを空にして、新たに壁を作りもしました。とはいえ、展覧会の企画と設営自体はスムーズに進みました。その期間中は、プロジェクトマネージャー、グラフィックデザイナー、建築家らを含む日本の展示会チーム全体と、主にZoomを通じて連携を密に取り組んできました。
日本のプロジェクトチームは、VWCOの展示設計を担当しました。私たちが送った部屋の図面や寸法や写真から、日本チームが展示の詳細やグラフィックのプランを手がけたのです。
オープニングレセプションの2週間前からは、プロジェクトチーム全員がコペンハーゲンにやってきて、展示の設営を行いました。日本チームは非常に綿密なプランを持っていて、誰が何を担当するのかも明確でした。当館も、サポートのために現地の大工や電気技師を用意しました。
展示品が入った8つの箱をついに開くときは、とても興奮しました。すべての展示品には細かな指示がついていて、苦労なく速やかに荷解きをし、VWCOのショールームに設置することができました。
設営やオープニングのためにプロジェクトチーム全員がコペンハーゲンに来る必要はなかったのかもしれませんが、誰もが実際に現場に来て、展示をじかに味わいたかったのだと思います。新型コロナウイルス感染症の関係で、それまでの開催地には足を運ぶことができなかったからです。

展覧会のオープニング

展示会のオープニングはとても盛況で、駐デンマーク日本大使、VKRホールディングの会長、地元の市長らが参加し、窓研究所所長の佐古泰規氏と展覧会総合監修の五十嵐太郎氏によるスピーチも行われました。翌日には、建築学科の学生や関係者を招待した「アフターパーティ」を開き、一般公開に先駆けた内覧を実施し、五十嵐氏による「日本における窓の歴史と表現」という講演を聞く機会も設けました。
地球の裏側にも私たちと同じテーマに取り組んでいる人たちがいるのだと知るのは素晴らしいことです。そして、日本のプロジェクトチームとのコラボレーションは非常に大きな経験であり、学ぶことも多く、刺激になりました。オープニング以降も連絡を取り合っており、この先もさまざまなコラボレーションの機会があることでしょう。コペンハーゲンは2023 年の「世界建築首都」に指定されただけでなく、2023年にはコペンハーゲンで「世界建築家会議(UIA)」も開かれるため、当館は現在、イベントの開催や展覧会のマーケティングに取り組んでいます。

 

ドローテ・ベック=ニールセン VWCOミュージアムディレクター

オーフス建築大学を建築士として卒業したのち、デンマーク・ジャーナリズム学校でジャーナリズムの修士課程を修了。25年以上にわたり、建築や建築物の普及に尽力している。
2011年以降はヴィラム・ウィンドウ・コレクション(VWCO)のディレクターを務め、ローザン・ボッシュ・スタジオと協力しながら、歴史的史料として窓を収集するにとどまらず、光や空気や景色にアクセスするための窓の重要性を伝えるモダンなミュージアムへと変貌させてきた。
またニールセンは、ヴィラム・ウィンドウ・コレクションにおける2つの企画展を手がけてもいる。2018年からは「Wall of Windows」と題し、68の歴史的なイギリスの窓を壁一面に展示している。この「Wall of Windows」は2014年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に向けて建築家のレム・コールハースが「エレメンツ・オブ・アーキテクチャー(建築要素)」というテーマでディレクションを務めたものである。もうひとつは、2022年から「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」展を開催している。オーフス建築大学を建築士として卒業したのち、デンマーク・ジャーナリズム学校でジャーナリズムの修士課程を修了。25年以上にわたり、建築や建築物の普及に尽力している。
2011年以降はヴィラム・ウィンドウ・コレクション(VWCO)のディレクターを務め、ローザン・ボッシュ・スタジオと協力しながら、歴史的史料として窓を収集するにとどまらず、光や空気や景色にアクセスするための窓の重要性を伝えるモダンなミュージアムへと変貌させてきた。
またニールセンは、ヴィラム・ウィンドウ・コレクションにおける2つの企画展を手がけてもいる。2018年からは「Wall of Windows」と題し、68の歴史的なイギリスの窓を壁一面に展示している。この「Wall of Windows」は2014年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に向けて建築家のレム・コールハースが「エレメンツ・オブ・アーキテクチャー(建築要素)」というテーマでディレクションを務めたものである。もうひとつは、2022年から「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」展を開催している。