Research & Works
窓の民族学
かつて北ユーラシアから北アメリカの人々は土で屋根を覆った土小屋に住んでおり、その天頂には構造上閉ざすことのできない空隙が残されていた。この天窓を通して家に出入りしていた人々は、梯子をかけ、その先端に入口を守る守護霊を飾った。これが窓の起源である。人の魂も天窓から出入りするとされ、天界と人間界の通り道でもあった。
なぜ人間はかくも居心地の悪い、閉ざされた空間を終の住処に定めたのか?
住まいの本質は、暗く、自然の厳しさから守られ、大地の懐に抱かれて眠るところにあったに違いない。そんな住まいの最大の矛盾、それは天窓である。けれども窓がなければ外界との接点をもてない。つまり、人間の住まいの歴史は、窓という矛盾を抱えて出発したのだ。