Research & Works

窓の民族学

撮影:佐藤浩司(国立民族学博物館展示)

かつて北ユーラシアから北アメリカの人々は土で屋根を覆った土小屋に住んでおり、その天頂には構造上閉ざすことのできない空隙が残されていた。この天窓を通して家に出入りしていた人々は、梯子をかけ、その先端に入口を守る守護霊を飾った。これが窓の起源である。人の魂も天窓から出入りするとされ、天界と人間界の通り道でもあった。
なぜ人間はかくも居心地の悪い、閉ざされた空間を終の住処に定めたのか?
住まいの本質は、暗く、自然の厳しさから守られ、大地の懐に抱かれて眠るところにあったに違いない。そんな住まいの最大の矛盾、それは天窓である。けれども窓がなければ外界との接点をもてない。つまり、人間の住まいの歴史は、窓という矛盾を抱えて出発したのだ。

BUNAK HOUSE "Deu Hoto" Desa Ekin, Kec.Lamaknen, Kab.Belu, Nusa Tenggara Timur, Indonesia
BUNAK HOUSE "Deu Hoto" Desa Ekin, Kec.Lamaknen, Kab.Belu, Nusa Tenggara Timur, Indonesia

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佐藤浩司 国立民族学博物館准教授/建築人類学者

1989年、東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得退学。工学修士。建築史・民族建築学専攻。1981年以来、フィリピン、台湾、インドネシア、マレーシア、タイ、韓国などで調査・研究に従事。編著に『シリーズ建築人類学《世界の住まいを読む》1~4』(学芸出版社)、『2002年ソウルスタイル 李さん一家の素顔のくらし』(千里文化財団)、『ブリコラージュ・アート・ナウ 日常の冒険者たち』(青幻舎)など。